英語教育を考える前に
ご存知の方も多いと思いますが、英語の学習開始の年齢を引き下げようという動きがあります。
これ、どうなんでしょうね?
個人的には、小学生から英語を始めたところで、日本人が急に英語を使いこなせるようになるとは思いません。
まあ、今考えられている程度の内容なら害にはならないでしょうから「やりたければ、やってみれば」という感じです。
効果があるとお考えの方もいらっしゃるようですし、やってみて効果を確かめるのも良いでしょう。
まず、日本語では?
それより、気になるのが日本語の運用能力。
最近、かなりの頻度で気になる場面に出会っています。
シーン①
レストランで聞いた会話です。
お客: 粉チーズもらっても良いですか?
店員: こちら、粉チーズになります。
こんな短い会話に、突っ込みどころ満載です。
シーン②
これは、別のレストランで店員に言われた一言。
店員: (私が食べ終わったのを見て)お下げしてよろしかったですか?
はじめて食器を片付けて良いか確認するのに「よろしかった」はおかしいです。
しかも、若者と呼ぶには年を重ねている方の発言だったから、尚びっくりです。
どう見ても、不惑と呼ばれる年齢は超えているでしょう。
こういう例は、決して珍しいものではありませんよね。
更にすごいのは、助詞を正しく使えない人。
適切な例が思い浮かばないのですが、助詞が使えないと日本語のネイティブとしては問題あると思います。
でも、ちゃんと使えない人、結構多い気がするんですよ。
話をしていて「あれ?」と思うことが頻繁に。
まともな日本語を話せる日本人を増やすほうが、先なんじゃないかなぁ…。
日本語が得意な人の方が英語習得が得意
私個人の感覚ですが、日本語の能力が高い人の方が英語を学習してからの上達が速い気がします。
第二言語の学習は、日本語を媒介して行われます。
ということは、日本語の能力が低い人は、英語を身につけるのが難しくなると思うのです。
実際に、大人と子供を比べたときに、大人の方が第二言語を身につけるスピードは速いという研究もあるようです。
これは、日本語をしっかり身につけて、日本語を使って論理的に考えられる大人の方が、語学は習得しやすいということではないでしょうか?
もっと具体的には次のような例が考えられそうです。
文法の参考書を読んだときに、日本語の能力が低いと参考書は読めませんよね。
英語の文法書は、なぜだかわかりませんが、必要以上に難解に書かれていますから。
参考書が読めないと、本から学ぶのが難しくなりますから、英語を学習する上での障害となるはずです。
もちろん、日本語を完全に排除してイマージョン方式で英語を勉強するというのなら話は違うんでしょうけどね。
英語で授業をできる人材が乏しい現状を考えれば、日本語を媒介として教えるしかないでしょう。
そうなると、日本語の能力低い人は英語を使えるようになりにくいと言い切ってよさそうです。
ちなみに、イマージョンに関してはこちらをご覧ください。
こんなえらそうなことを書いた私の国語力は…。
考えないことにしよ。
英語早期教育のデメリット
英語の早期教育に関しては、メリットばかりが強調されることが多く、デメリットを指摘してくれる意見は少ないように思います。
しかし、実際は母語の習得がおろそかになるというデメリットがあるのではないかという懸念は私自身持っていました。
人間は通常 母語を使って考えます。
母語の水準が高くないと、抽象的な事柄を考えるのが難しいはずです。
「数学が出来る人は国語の成績もいい」という話を聞いたことがあります。
テレビだったか、何かの記事だったか思い出せませんが。
これは、母語の能力と抽象的な思考に関連があるということなのでしょう。
個人的にも、学生時代に塾の講師をしていた経験から同じようなことを感じます。
数学が出来る生徒は、話をしていても論理的に話すことが出来るのです。
逆に数学が苦手な子の何人かは、言葉を使って論理的に処理することが苦手だったようです。
普通の会話は問題なくても、筋道立てて物事を伝えるのが苦手なように感じました。
私自身は、英語の早期教育をどのような形で行うのが良いのかよくわかりませんが、英語教育より日本語教育を大事にして欲しいという立場です。
結果的に日本語が十分に身に付かないのなら、害の方がはるかに大きそうです。
本気で英語を学びたければ、独学でも有る程度の水準にはいけますしね。
ただ「アメリカンスクールに行ってネイティブと同じような教育を受ければ、ネイティブと同じように話せるようになる」と言われると心が動くのもわからないではありません。
特に、語学に自信が無くて、英語が話せることに強い憧れを持っている親の立場からしたら、さぞかし「甘美」な響きがすることと思います。
この問題、色々な考えの人がいそうです。
難しいですね。
英語以外の言語でも
あと、私自身も、全員一律の英語教育に疑問を持っています。
英語は中学まで必修で高校からは他言語と選択出来るようにした方が良いと思うんですけどね。
日本で実際話す可能性があるという観点から考えたら、中国語とか朝鮮語とかポルトガル語を知っていた方が話す機会が多いかも。